【 子どもの貧困42兆円の社会損失 】
2017.07.30
これは日本社会の、そして自分に返ってくる問題として意識すべし。
この記事は初見です
僕の将来
◎子どもの貧困は42兆円の社会的損失!「こども宅食」
が挑む、日本の隠れた貧困問題とは 【7人に1人の子どもたちが「見えない貧困」に苦しむ】
「日本では7人に1人の子どもが貧困状態にある」。
こう聞いてすぐには実感が湧かないという方もいるので
はないでしょうか。日本で相対的貧困状態にある17歳以 下の子どもの割合は、2015年時点で13.9%となっ ています。 貧困と聞くと、アフリカなどの途上国で見られるような
、食べ物や着る服を用意するのも困る「絶対的貧困」をイ メージするかもしれません。 今日食べるものさえままならず、栄養失調になっている
ような状況です。 日本をはじめとした先進国では、「相対的貧困」という
貧困の指標が用いられます。 「相対的貧困」とは、貧困ラインに満たない暮らしを強
いられている状態のこと。貧困ラインに満たない暮らしと は、国民の可処分所得を高い人から低い人まで順番に並べ た時に、ちょうど真ん中にくる値の半分以下になる水準未 満で生活している状態のことを指します。 貧困ラインは「可処分所得」という、給料のうち「自由
に使えるお金」を元に計算します。税金や社会保険料を差 し引いて手元に残ったお金が「可処分所得」にあたります 。 2012年では、親1人・子1人の世帯で約173万円
が貧困ライン。
この金額では特に都市部だと生活に余裕はなく、最低限の衣食住で精一杯となります。 このように、衣食住をまかなうのにギリギリで、学習塾
に通う、ちょっとした旅行に行くなど、社会の中で「普通 」とされる機会を得られない状態を「相対的貧困」といい ます。 相対的貧困は「見えづらい」のが特徴です。
例えば、最近は服や靴が格安で手に入るブランドも多く、また、仕事が忙しく留守がちな親との連絡の生命線とし て、ほとんどの家庭で子どもはスマートフォンを所持して います。
着ているものや持ち物は普通の家庭と変わりません。そして、生活の厳しさを周囲に伝えることを憚る方も多
くいらっしゃいます。
結果として、周りからは貧困家庭であると見えないことも多いのです。これは日本の貧困問題の特徴でもあります 。 【ひとり親家庭の子どもたちの2人に1人が相対的貧困】
背景の一つには、ひとり親家庭の置かれている厳しい経
済状況があります。 厚生労働省が2017年に出した「ひとり親家庭等の現
状について」によると、ひとり親家庭の相対的貧困率は5 0.8%となっており、ひとり親家庭の子どもたちの2人 に1人が貧困状態にあります。 大人が2人以上いる家庭の相対的貧困率は10.7%。
ひとり親家庭の相対的貧困率は、そうでない家庭の約5倍 もの数値となっているのです。 【母子家庭の約6割はワーキングプア。働いても相対的貧
困から抜け出せない現状】 OECD(経済協力開発機構)の2008年の調査によ
ると、ひとり親家庭の貧困率は仕事をしていない家庭で6 0%、仕事をしている家庭で58%となっています。 働いても働いていなくても、貧困率がほとんど変わらな
いのです。 これは、一生懸命に働いているのに貧困から抜け出せな
い「ワーキングプア」という状態に陥っているといえます 。 ほとんどの国では、仕事をしているひとり親家庭の貧困
率は10~25%程度。海外と比較しても、日本のひとり 親家庭は厳しい状況に置かれているといえるのです。 厚生労働省が2017年に出した「国民生活基礎調査」
によると、母子世帯のうち、45.1%が生活を「大変苦 しい」と感じています。
生活を「やや苦しい」と答えた人まで含めると、82.7%もの人が日々の生活に苦しんでいます。 日本では母子家庭の8割以上のお母さんは仕事をしてい
ます。 しかし、半分以上が非正規雇用です。
非正規雇用になると、長く働いてもなかなか給料が変わらないなど、福利厚生の面で不安定な状況に置かれている のです。 【子どもの貧困がもたらす所得の損失は約42兆円】
「そう言われても自分とは関係ないことだし……」と思
われた方へ。
いいえ、実は子どもの貧困問題をこのまま放っておくと、あなたの生活にも大きな影響があるのです。 日本財団 子どもの貧困対策チームは2015年に「子どもの貧困の
社会的損失推計」の調査結果を発表しました。
そこで明らかになったのは、低所得世帯で育った子どもは教育を受ける機会が少なくなってしまうということ。 世帯収入は学力と非常に高い相関関係にあり、学力の差
は学歴の差として現れます。
大学等進学率は全世帯平均が73.3%なのに対し、ひとり親家庭は41.6%という大きな格差が生まれていま す。 進学率が低くなると、非正規雇用や働きたくても働けな
い人の増加につながります。
これはすなわち、その人達が働いて稼いだお金から税金や社会保険料を納める金額が減っていくのと同時に、生活 保護などの公的支出が増えていくことを意味するのです。 子どもの貧困を放置すると、現在の0〜15歳児につい
て、将来の所得の損失は総額で42兆9000億円、それ による財政収入の損失は15兆9000億円に達します。 1年あたり、所得は約1兆円、財政収入は約3500億
円の損失です。この社会的なコストは、あなたも含めた日 本国民全体が分かち合うことになるのです。 さらに、生まれた家庭の経済格差は教育格差を生み、そ
れが子どもの将来の所得格差につながります。
こうして今の世代の貧困が次世代の貧困を生む「貧困の連鎖」が続いていくのです。 子どもの貧困がもたらす社会的損失の影響は非常に大き
く、また、貧困が連鎖することによって、継続的に私たち 一人一人に重くのしかかってくる社会課題であり続けます 。 決して他人事ではないのです。
【文京区から全国へ!子どもの貧困解決モデルを広げる】
「なんとかしたい!でも私に何ができるだろう?」そう
思ったあなたへ。
私たち一人一人はこれからどのようなアクションをとっていけばいいのでしょうか。 子どもの貧困という構造的な課題を解決していくために
、先日「こども宅食」がキックオフしました。
「こども宅食」は、文京区内に住む、18歳以下の子どもがいる、生活が苦しい家庭1,000世帯に定期的に食 品を届けていくというもの。 食品を届けることをきっかけに、困っている家庭とコミ
ュニケーションをとり、どんな支援が求められているのか を探り、同時に、適切な支援先との橋渡しをすることを目 指します。 つながりを活かして食品にとどまらない様々な支援を届
けることや、虐待のリスクをできるだけ早く発見すること も、大切なミッションとなっています。 まずは文京区で小さな成功事例を作り、ノウハウ公開や
政策化により同じ仕組みを全国に広げることで、全国の子 どもの貧困問題解決につなげていく。そんな未来を描いて います。 経済的に厳しい状況にある人たちの生活を豊かにしてい
くことは、社会全体の将来の損失を減らすことにつながり ます。
そして同時に「貧困の連鎖」を断ち切ることにつながっていく。 子どもたちにとっても、社会全体にとっても、明るい未
来が待っているはずです。
「こども宅食」のサポートを通じて、一緒に子どもの貧困問題解決に取り組んでみませんか? >>「こども宅食」の応援はこちらから
http://buff.ly/2uZzcrf参考文献
・OECD “Growing Unequal? Income Distribution and Poverty in OECD Countries”
・『徹底調査 子供の貧困が日本を滅ぼす 社会的損失40兆円の衝撃』文藝春秋
・日本財団「子どもの貧困の社会的損失推計 レポート」
・厚生労働省「平成28年 国民生活基礎調査の概況」